【図解】初心者向け証拠金取引の仕組み・差金決済とは
証拠金取引を利用した金融商品の取引には
- 先物取引
- FX(Foreign eXchange:外国為替)証拠金取引
- 仮想通貨FX 等々
があります。
これら取引を開始する為には、取引口座を業者を通して開設、証拠金を入金する必要があります。
証拠金とは、「保証金」のような物です。
証拠金の説明の為、日本における一戸建てやアパート・マンションの賃貸契約の話を持ち出します。
一戸建てやアパート・マンションを賃貸する際に初期費用として、敷金や保証金という名目で借主から貸主に一定の金額を預けます。
借主が
- 家賃滞納
- 退去時に内装の経年劣化以外での破損
これらを起こした際に、貸主が借主から預かっている保証金(敷金)から、家賃滞納分・修理代を差し引きます。
ここで話を証拠金取引の証拠金に戻します。
証拠金取引の証拠金は、この賃貸契約の保証金と性格が似ており、証拠金取引で
- 損失が確定する・・・証拠金から損失分が減少
- 利益が確定する・・・証拠金に利益分が増加
となっています。
証拠金の性質を理解したところで、証拠金取引の仕組みを説明していきます。
証拠金取引の仕組み
- 先物取引
- FX(Foreign eXchange:外国為替)証拠金取引
- 仮想通貨FX 等々
これら取引により損失が生じた場合、投資家の取引口座から決済が出来るように、一定額の金銭を預けておく必要があります。
この預け入れる金銭を証拠金と呼び、この証拠金を利用した取引のことを証拠金取引と呼びます。
証拠金取引の仕組みを理解する上で、
- 差金決済
- レバレッジ
- ロスカットと追証
これらを学ぶ事で理解が一層深まります。
差金決済
- 先物取引
- FX(Foreign eXchange:外国為替)証拠金取引
- 仮想通貨FX
これら取引は、基本的には差金決済を利用して取引を行います。
差金決済を理解する為に、差金決済の対義語である現物取引を説明します。
現物取引の例として、株式取引を挙げてみます。
株式取引の場合、売買の都度、代金を受け渡します。
株価10,000円のA社株式が株式市場で取引されている場合、株価10,000円の株式を購入する為には10,000円が必要です。
株式購入後、A社株式の株価が
- 8,000円になり売却・・・手元に8,000円が返却 → 2,000円の損失
- 11,500円になり売却・・・手元に11,500円が返却 → 1,500円の利益
対して、差金決済を商品市場を例に出して説明します。
例えば、5,000円/グラムの金(ゴールド)が商品市場で取引されているとします。
取引をする為、
- 商品市場の証券口座を開設
- 証拠金という担保を証券口座に入金
- 証拠金を入金後、5,000円/グラムの金(ゴールド)を購入
差金決済では、株式の現物取引とは違い、この5,000円/グラムの金(ゴールド)を購入した際、実資産である金(ゴールド)は受けとりません。
また、実際に5,000円も支払いません。
金(ゴールド)購入後、金(ゴールド)の価格が
- 4,500円になり売却・・・証拠金から500円出金 → 500円の損失
- 5,300円になり売却・・・証拠金に300円入金 → 300円の利益
このように差金決済では、決済時の売買により生じた損益(差額)のみを受け渡します。
レバレッジ
レバレッジ(leverage)自体の意味は、「テコの原理」で有名な「テコの作用」という意味です。
- 力点
- 支点
これらを利用して作用点に力を働かせるというものです。
経済・金融活動でのレバレッジは、自己資本を元本として資金調達を行い、取引額を自己資金以上に引き上げる。という意味で使われています。
例えば、株式の現物取引では証拠金取引は利用出来ないので、投資家の証券口座に10万円入金した場合、投資家は10万円の現物取引しか出来ません。
つまり、レバレッジ効果は1倍になります。
しかし、証拠金取引が利用できる取引では、投資家の証券口座に預けた証拠金の何倍もの取引が可能になります。
少ない資金で何倍もの取引が出来る証拠金取引は、ハイリスク・ハイリターンの取引になります。
これから証拠金取引を始めようと思っている投資家の方は、十分に注意する必要があります。
下記の表は、
- 先物取引
- FX(Foreign eXchange:外国為替)証拠金取引
- 仮想通貨FX
それぞれの
- 証拠金
- 最大レバレッジ
になります。
証拠金 | 最大レバレッジ | |||
---|---|---|---|---|
先物取引 | 商品先物 | 金 | 264,000円 (SPAN証拠金額) | |
原油 | 240,000円 (SPAN証拠金額) | |||
とうもろこし | 45,000円 (SPAN証拠金額) | |||
株価指数先物 | 日経225先物 | 1,620,000 円 (SPAN証拠金額) | ||
TOPIX先物 | 1,095,000 円 (SPAN証拠金額) | |||
国債先物 | 長期国債先物 | 1,020,000円 (SPAN証拠金額) | ||
FX証拠金取引 | ![]() | レート×通貨単位×4% | 25倍 | |
![]() |
||||
![]() |
||||
仮想通貨FX取引 | ![]() | 現在停止 | 4倍 | |
![]() | 建玉数量 × 建玉レート(約定時価格)× 25% | |||
![]() |
||||
![]() |
現在、世界の主要先物・オプション取引所・清算機関で採用されており、SPANを用いて証拠金の計算が行われています。
ロスカットと追証
証拠金取引は、投資家の取引口座に預けた証拠金の何倍もの取引が可能です。
それ故に、相場の急激な変動により証拠金を上回る損失が生じる可能性もあります。
証拠金を上回る損失が生じた場合は、取引業者への借金になるので返済しなくてはなりません。
このハイリスク・ハイリターンの証拠金取引において、投資家の損失を限定するのが
- 追証(おいしょう)・・・追加保証金
- ロスカット・・・強制決済
になります。
下記の表は、
- 先物取引
- (Foreign eXchange:外国為替)証拠金取引
- 仮想通貨FX
それぞれの追証ルールになります。
追証ルール | ||
---|---|---|
商品先物取引 | ![]() | 日中の立会い後、帳入値段が決まり証拠金が不足時に発生(*1) |
株価指数先物取引 | ![]() | 大引時点で受入証拠金が最低証拠金所要額を下回った場合に発生 |
![]() |
||
![]() |
||
FX証拠金取引 | ![]() | 証拠金維持率が100%を下回っていた場合に発生 |
![]() |
||
![]() | 追証制度なし。 証拠金維持率が100%を下回っていた場合、ロスカットが発生。 |
|
仮想通貨FX取引 | ![]() | 現在停止 |
![]() | 証拠金維持率が100%を下回った場合、追証が発生。 証拠金維持率が50%を下回った場合、ロスカット発生。 |
|
![]() | 追証制度なし。 証拠金維持率が80%を下回っていた場合、ロスカットが発生。 |
|
![]() | 追証制度なし。 証拠金維持率が75%を下回っていた場合、ロスカットが発生。 |
|
(*1)取引中の建玉(ポジション)は、商品取引所と商品先物業者間で日々精算を行っています。 その際の精算基準となる価格を「帳入値段」と呼びます。通常はその日の終値となります。 証拠金不足 = 純資産 < 維持証拠金 ・・・この状態が証拠金不足 維持証拠金 = SPAN証拠金 + 受渡証拠金 純資産= 現金 + 有価証券 + 帳尻金 + 値洗い金(帳入値段) ※帳尻金・・・建玉(ポジション)の決済により生じた売買差損益金 |
証拠金維持率
- 追証
- ロスカット
は証拠金維持率を基準に基本的に設定されています。
証拠金維持率 = 有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100%
この計算式で求められます。
必要証拠金
取引・注文する際に最低限必要な証拠金です。
必要証拠金 = 取引レート × 取引単位 × 数量 ÷ レバレッジ
(Foreign eXchange:外国為替)証拠金取引を例にとると、
- 取引レート・・・米ドル/日本円 110円
- 取引単位・・・取引通貨単位 10,000通貨
- 数量・・・1ロット
- レバレッジ・・・25倍
必要証拠金は、取引レート(110円) × 取引単位(10,000通貨) × 数量(1ロット) ÷ レバレッジ(25倍) = 44,000円となります。
つまり、
- 取引レート・・・米ドル/日本円 110円
- 取引単位・・・取引通貨単位 10,000通貨
- 数量・・・1ロット
- レバレッジ・・・25倍
この条件下で、米ドル/日本円を取引したい場合は、最低でも44,000円を証拠金をしてFX業者に預ける必要があります。
有効証拠金
有効証拠金とは、証拠金に取引しているポジション(建玉)の含み損益を加減した金額のことです。
有効証拠金 = 証拠金 +- 含み損益
- 取引レート・・・米ドル/日本円 110円
- 取引単位・・・取引通貨単位 10,000通貨
- 数量・・・1ロット
- レバレッジ・・・25倍
を買いポジション(ロング、買建玉)で保有しているとします。
米ドル/日本円の取引レートが110円から109.5円の円高ドル安になったとします。
50銭の円高ドル安ですので、50銭 × 取引単位(10,000通貨) = 5,000円の含み損となります。
有効証拠金は、証拠金(44,000円)ー 含み損益(ー5,000円)= 39,000円となり、5,000円の追証が必要になります。
この場合
- 必要証拠金・・・44,000円
- 有効証拠金・・・39,000円
- 証拠金維持率・・・88.6 %
となります。
以上が、証拠金取引の仕組みについての説明になります。
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