マネタリーベース・マネーストックの統計と信用乗数




マネタリーベース・マネーストックの統計と信用乗数

日本銀行券(紙幣)の発行権は日銀にあります。

2020年4月末時点で、日本銀行券(紙幣)の残高は、110兆3,642億円です。

実際に日銀が発行した紙幣残高が110兆3,642億円ですので、世の中に出回っている金額の合計も110兆3,642億円だと思いますか。

2020年4月時点でのトヨタ自動車の決算書によると、トヨタ自動車が保有している現預金は3兆円ですので、トヨタ一社だけで日銀が発行した紙幣残高の2.8%も占めている事になります。

実際は日本銀行券(紙幣)の何倍ものお金が世の中に流通しています。

これは金融活動が鍵を握っています。

金融活動とは経済活動に対して

  1. 客観的な価値を持たらし、それを貨幣という尺度で表示
  2. 秩序と倫理(モラル)を保つ
  3. 信用創造により経済成長を促進

役割を果たしています。

具体的に説明すると、

  1. 物・サービスの供給は、「貨幣の単位」尺度が表示
    • りんご1個・・・100円
    • コンビニバイトの時給・・・900円
    • エアコンのクリーニング・・・20,000円 等々
  2. 物・サービスの交換の際に、貨幣が存在しないと不平等な取引が行われる
  3. 市中に出回る貨幣量を増やすことで、物・サービスの取引活動を活発化

させています。

この信用創造とは、「銀行等の金融機関が預金者からの預金を、企業や個人に貸し出し、世の中に流れるお金の量を増やす事」です。

この記事では金融活動の主な役割である信用創造と深い関係にある

  • マネタリーベース
  • マネタリーストック

についてそれぞれ説明していきます。

マネタリーベース

マネタリーベース

マネタリーベースとは、現金通貨と民間の金融機関が中央銀行に預けた金銭の合計のことを指します。

つまり、「日本銀行(以下、日銀)が世の中に直接的に供給するお金」のことです。

具体的には、市中に出回っているお金である流通現金である

  • 日本銀行券発行高・・・紙幣
  • 貨幣流通高・・・硬貨

と日本銀行当座預金の合計値になります。

マネタリーベース = 日本銀行券発行高 + 貨幣流通高 + 日本銀行当座預金残高

マネタリーベースの定義は、国によって多少変わりますが、日本では

  • 現金通貨 = 紙幣 + 硬貨
  • 中央銀行預け金 = 日銀当座預金残高

と定義付けしています。

マネタリーベースの貨幣量を見ることで、日銀が「直接コントロール出来る貨幣量」がわかります。

下記は、2010年以降のマネタリーベースの推移です。

マネーストック

マネーストック

マネーストックとは金融機関と中央政府を除いた「国内の経済主体が保有する通貨の合計」の事を指します。

つまり、「金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量」のことです。

具体的には、一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体(金融機関・中央政府を除いた経済主体)が保有する通貨(現金通貨や預金通貨など)の残高を集計しています。

日銀が公表するマネーストックは、対象となる金融商品の範囲や預入先となる金融機関等の違いによって

  • 「M1」
  • 「M2」
  • 「M3」
  • 「広義流動性」

4つの指標からなります。このうち、代表的な指標は「M3」とされています。

  1. M1 = 現金通貨 + 預金通貨(預金通貨の発行者は、全預金取扱機関)
    • 現金通貨 = 銀行券発行高 + 貨幣流通高
    • 預金通貨 = 要求払預金(当座、普通、貯蓄、通知、別段、納税準備)− 調査対象金融機関の保有小切手・手形
  2. M2 = 現金通貨 + 預金通貨 + 準通貨 + CD
    • 準通貨 = 定期預金 + 据置貯金 + 定期積金 + 外貨預金
    • CD = 譲渡性預金
  3. M3 = 現金通貨 + 預金通貨 + 準通貨 + CD
  4. 広義流動性 = M3 + 金銭の信託 + 投資信託 + 金融債 + 銀行発行普通社債 + 金融機関発行CP + 国債 + 外債

経済が活発だと、

  • 個人消費の活性化
  • 企業の売上も伸び、規模拡大の為の設備投資
  • 企業の受注増加による、仕入れ費の増大

等の為に民間の銀行から貨幣を借りて資金を準備します。

企業は自社の成長の為、多少借入金の金利が高かろうが、売上規模拡大の為に銀行から借入をします。

銀行も、借入内容がポジティブな案件であれば、金利を高く設定して利益を増やすために資金を貸出します。

  • 銀行の貸出しが増加
  • 市中に出回る貨幣量の増加
  • マネーストックが増加

となります。

  • 社員の給料支払い
  • 他行の借入金の返済
  • 仕入先への買掛金の支払い 等々

の理由による借入もありますが、ネガティブな案件では銀行からの資金調達は至難の業です。

銀行は、貸し倒れを起こさないために資金を貸し渋ります。

貸し倒れ・・・売掛金や貸付金などの債権が、倒産などの理由で回収できず損失となること。

貸し渋り・・・特に問題のない借り手に対して、銀行等の金融機関が融資条件(金利・返済期間・担保等)を厳しくするなどして、融資(貸し出し)に消極的になること

マネーストックの貨幣量を見ることで、「市中に出回っている貨幣量」がわかります。

下記は、2010年以降のマネーストックの推移です。

マネタリーベース・マネーストック・信用創造の関係

マネタリーベース・マネーストック・信用創造の関係

「市中に出回っている貨幣量」の増加は、日銀の「準備預金制度」によっても操作されています。

準備預金制度

準備預金制度とは、市中銀行の預金の一定割合の額を中央銀行である日銀に預け入れさせる制度の事です。

各金融機関は

  • 日銀に口座(日銀当座預金)を開設
  • 保有している顧客による預金引出しに備えるための支払準備金を法的に制度化
  • 預金の一定割合(準備預金率)を中央銀行に強制的に預入れ

しています。

預入れを義務づけられた最低金額を「法定準備預金額」と言います。

準備預金制度

金融機関は、

  • 準備預金率が引き上がると・・・
    1. 企業に融資していた資金などを回収
    2. 中央銀行に資金を預入れ
    3. 銀行から企業への貸出しの減少
    4. マネーストックは減少

    金融が引き締められ金利が上昇

  • 準備預金率が引き下がると・・・
    1. 法定準備預金額より余っている金額は中央銀行より資金を引き出し
    2. 金利で利益を稼ぐために企業に融資等の貸し出しが増加
    3. マネーストックが増加

    金融が緩和され金利の低下

これを支払準備率操作と言います。

信用乗数

信用乗数とは、日銀が「直接コントロール出来る貨幣量」を利用してどれだけ「市中に出回っている貨幣量」を増やしているかという指数になります。

信用乗数 = マネーストック ÷ マネタリーベース

  • マネタリーベース・・・日銀が「直接コントロール出来る貨幣量」
  • マネーストック・・・「市中に出回っている貨幣量」

いくら日銀がマネタリーベースを増やしても、マネーストックが増加しないと、経済は好転しません。

2012年以降、マネタリーベースは急激な増加が起きているのにも関わらず、肝心なマネーストックが伸びていません。

2008年のリーマンショック以降、日銀がマネタリーベースを大幅に増加させていますが、マネーストックが伸びていない為、信用乗数は低下の一途を辿っています。

以上、

  • マネタリーベース
  • マネタリーストック

についての説明になります。

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