【図解】トランジスタとは?トランジスタの仕組み・役割
現代の生活で欠かすことの出来ないスマートフォン。
日本では、Apple社のiPhoneシリーズが人気です。
そのiPhoneのSoC(System-on-a-Chip)に搭載されているトランジスタの数は、新機種が発売される度に指数関数的に増加しています。
機種 | SoC (System on a Chip) | トランジスタ数 |
---|---|---|
iPhone 5s | Apple A7 Bionic | 約10億個 |
iPhone 6 | Apple A8 | 約20億個 |
iPhone 7 | Apple A10 Fusion | 約33億個 |
iPhone 8 | Apple A11 Bionic | 約43億個 |
iPhone XR | Apple A12 Bionic | 約69億個 |
iPhone 11 | Apple A13 Bionic | 約85億個 |
- GPU
- 4G/3G、Wi-Fi
- カメラ、オーディオ・ビデオ
- ディスプレイ
- 各種センサ
- GPS 等々
に関するあらゆるシステムが1つのチップにまとめられ搭載されている集積回路【IC】(以下、ICと呼ぶ)製品の事を指します。
ICに関する記事はこちら
この記事では、そんな現代の生活に欠かせないスマートフォンに何十億個と搭載されているトランジスタの
- 仕組み
- 役割
についてそれぞれ説明していきます。
トランジスタの仕組み
トランジスタは、N型・P型半導体の性質を利用した能動素子です。
N型・P型半導体とは、それぞれ
- N型半導体・・・陰電気を帯びている半導体
- P型半導体・・・陽電気を帯びている半導体
になります。
真性半導体であるシリコン等々は、そのまま使用しても自由電子は動きにくく、絶縁体同様、通電しません。
半導体として電気を流す為には、不純物の
- リン
- ホウ素
を真性半導体のシリコン等々に混ぜ込むことで
- リン、ヒ素 等を不純物として添加・・・N型半導体
- ホウ素、アルミニウム 等を不純物として添加・・・P型半導体
とそれぞれが生成されます。
N型半導体・P型半導体に関しての記事はこちら
能動素子とは、トランジスタやダイオードのように、入力信号あるいはエネルギーを
- 増幅
- 制御
- 変調
して出力するなどの機能を有する素子の事を指します。
ダイオードに関する記事はこちら
- 抵抗器
- コンデンサ(キャパシタ)
- コイル
のように、増幅や電気エネルギーの変換のような能動的機能をもたない素子の事を指します。
抵抗器に関する記事はこちら
コンデンサ(キャパシタ)に関する記事はこちら
トランジスタには
- エミッタ
- ベース
- コレクタ
と呼ばれる端子があります。
- P型の両端をN型で挟んだトランジスタ・・・NPN型トランジスタ
- N型の両端をP型で挟んだトランジスタ・・・PNP型トランジスタ
があり、ベース – エミッタ間を流れる電流によって、コレクタ – エミッタ間の電流を制御します。
実際のNPN型トランジスタの働きを見てみましょう。
- エミッタとコレクタはN型半導体・・・自由電子がある(電子が過剰)
- ベースはP型半導体・・・正孔がある(電子が不足)
単体ではそれぞれ(エミッタ・コレクタ・ベース内)をキャリアとして電流が流れています。
この場合、
- 自由電子
- 正孔
がキャリアになります。
- エミッタ – コレクタ間に、エミッタ側を(ー)として印加 -> 電流は流れない
- エミッタの自由電子がコレクタ側(+)に引き寄せられてベースに流れ込み、正孔と結合。
ベースの正孔は数が有限で、全てが自由電子と結合する事で、ベース内にキャリアが存在しなくなる -> 電子の移動が停止(エミッタ – ベース間には空乏層が形成) - コレクタ内の電子も(+) 極に引き寄せられて移動しますが、コレクタへは新たな電子の流入がないため、コレクタの電子が全て(+)極の正孔と結合した時点で電子の移動が停止
- エミッタ – ベース間に、エミッタ側を(ー)として印加 -> トランジスタ全体に電流が流れる
- ベースには新たに正孔が流入、エミッタに存在する自由電子がベースに向かい移動
- 移動した自由電子のうち一部はベース内の正孔と結合、ベースは非常に薄い層である為、大部分の自由電子はコレクタに引き寄せられてベースを通過 -> トランジスタ全体に電流が流れる
エミッタ – コレクタ間の電流はエミッタ – ベース間の電流に比例して変化することになります。
- ベース(Base)がベース電流を基本(Base)として
- エミッタ(Emitter)が放出した(emit)電子を
- コレクタ(collector)が受け取る(collect)
という名前通りの働きをします
トランジスタの回路記号
- NPN型バイポーラトランジスタ
- PNP型バイポーラトランジスタ
トランジスタの役割
トランジスタの役割は大きく分けて
- 回路をオン/オフにするスイッチの様な役割
- 回路を流れる電流の量を変化させる可変抵抗器の様な役割
の2つあります。
回路をオン/オフにするスイッチの様な役割
トランジスタのエミッタ – ベース間の電流(ベース電流)によってエミッタ – コレクタ間のより大きな電流(コレクタ電流)を制御できる役割を果たしています。
回路を流れる電流の量を変化させる可変抵抗器の様な役割
トランジスタは可変抵抗器の様な役割を果たしています。
エミッタ – ベース間のわずかな電流変化は、エミッタ – コレクタ間電流に大きな変化となって現れます。
例えば、電流の比率が
- トランジスタ回路(左側回路)・・・1
- 本回路(右側回路)・・・10
という回路があるとします。
トランジスタは、電流の比を常に一定の比率に保つように調整する機能を備えています。
トランジスタ回路(左側回路)の電流を1 ➡ 5 に変化させると
- トランジスタ回路(左側回路)・・・5
- 本回路(右側回路)・・・50
となります。
トランジスタの機能により
- トランジスタ回路(左側回路)・・・1 -> 5
- 本回路(右側回路) ・・・10 -> 50
トランジスタ回路(左側回路)の電流の増加が、本回路(右側回路)の電流の増幅に繋がりました。
これ故に、トランジスタには増幅作用があると言われています。
以上が、トランジスタの
- 仕組み
- 役割
についての説明になります。
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