バングラデシュの歴史・政治・宗教と国民の生活
バングラデシュは、
- インド
- スリランカ
- ネパール
- パキスタン
- バングラデシュ
- ブータン
- モルディブ
と共に南アジアを形成する国の一つです。
この記事ではバングラデシュの
- 独立するまでの歴史
- 国内政治
- 宗教と国民の生活
- ビザ関係
それぞれに分けて説明しています。
バングラデシュの歴史
南アジア地域は1,858年から1,947年までイギリス領インド帝国でした。
第二次世界大戦が終結した翌々年の1,947年8月15日、インド帝国はインド・パキスタン分離独立によって解体されます。
インド帝国内で離独立原因は
- インド・・・ヒンドゥー教
- パキスタン・・・イスラム教
という思想の違いでした。
この時点で、まだバングラデシュは誕生していません。
インド・パキスタン分離独立によって
- インド連邦
- パキスタン
に分国され、パキスタンの飛地の東パキスタンが、現在のバングラデシュになります。
パキスタンの国土はインドを挟んで
- 西パキスタン(現在のパキスタン)
- 東パキスタン(現在のバングラデシュ)
となっていました。
この時点でバングラデシュはパキスタンの一部(東地方)だったのです。
2度目の独立
1度目の独立であるは、インド・パキスタン分離独立の主因は宗教的観点が起因していました。
では、バングラデシュ(当時は東パキスタン)がパキスタンから独立した原因は何だったのでしょうか。
ベンガル語・ウルドゥー語
東パキスタンのイスラム教徒は将来に展望が持てるイスラム教国家としてパキスタンを選んだのですが、いざパキスタンが出来上がってみると、それは東パキスタンのイスラム教徒住民の期待を大きく裏切るものでした。
契機は、国語問題であったと言われています。
西パキスタンはアラビア文字を使用するウルドゥー語を国語にして国民統合を図ろうとしました。
しかし、東パキスタンの住民は、ヒンドゥーとの関わりの強い文字を用いるベンガル語を母語としていました。
ウルドゥー語の使用を東パキスタン住民が強制されれば、東パキスタンの立場が著しく不利な立場におかれることになると考え、東パキスタン住民は言語運動と呼ばれる激しい反対運動を起こし、その結果
- ウルドゥー語
- ベンガル語
が公用語として認定されました。
バングラデシュ独立戦争
しかし、西パキスタンからみれば東パキスタンはイスラム圏の辺境とみなされ、文化的な後進地域の扱いを受けます。
これが経済面にも反映し、パキスタンの主要輸出品であるジュートは東パキスタンの特産品ですが、その輸出から得られた外貨は専ら西パキスタンの開発に投下されていました。
写真左:ジュート畑 写真右:ジュート
同国ながらも文化的な後進地域の扱いを受けた東パキスタンはイスラム信仰ではなく、ベンガル語を中核とするナショナリズムを理念とし、シェイク・ムジブル・ラフマン率いる政党(=現・与党アワミ連盟)が、パキスタンからの独立に動き出します。
独立に動き出した東パキスタンは
- 1970年、パキスタン国会総選挙で、人口の過半数を制する東パキスタンの政党アワミ連盟が勝利
- パキスタン中央政府は東パキスタン住民の弾圧に乗り出し、東パキスタンの解放勢力はゲリラ戦で対抗
- 1971年12月3日、パキスタンと対立していたインド政府がに東パキスタン側に介入(第三次印パ戦争)
- 1971年12月16日、国力では不利なパキスタン軍がインドに対して劣勢となり撤退
- 東パキスタンはバングラデシュとして独立
このようにして現在のバングラデシュ国家が成立しました。
バングラデシュの国内政治
バングラデシュの議会体制一院制を採用しており選挙制度は下記の通りです。
定数:350 人 | 任期 | 解散 | |
---|---|---|---|
単純小選挙区制 | 300 人 | 5年 | あり |
女性議員。単純小選挙区制における政党ごとの得票率に応じ議席配分 | 50 人 |
2018年12月30日、総選挙後の議席数は、与党連合が288議席を獲得し圧勝しました。
党派 | 議席数(定数:300 人) |
---|---|
アワミ連盟(最大与党) | 259 議席 |
国民党(エルシャド派)(与党) | 20 議席 |
労働党(与党) | 3 議席 |
バングラデシュ民族主義党(BNP)(最大野党) | 6 議席 |
バングラデシュの主要政党は
- アワミ連盟
- バングラデシュ民族主義党(BNP)
があります。
アワミ連盟
党首 | シェイク・ハシナ |
---|---|
政治的思想 | ・民族主義 ・政教分離主義 ・民主主義 |
政治的立場 | 中道左派 |
政策は中道左派的で、親インド的といわれています。
中道左派・・・穏健な左派の事を指します。
一般的に中道左派は国家共同体による
- 富の再分配
- 福祉・社会保障
を積極肯定する勢力とされています。
左派・・・組織内、特に政党内で革新的・急進的な一派を指します。
バングラデシュ民族主義党(BNP)
議長 | カレダ・ジア |
---|---|
政治的思想 | ・民族主義 ・民主主義 ・穏健な改革 |
政治的立場 | 中道右派 |
Bangladesh Nationalist Party(略称:BNP)は、バングラデシュの民族主義の右派の主要政党の一つです。
民族主義・・・異なる自他の民族間で政治・経済・文化などの分野について、みずからの民族を主体と考える思想や運動
右派・・・政治において「特権階級による特権の維持を目指すための社会制度を支持する層」を指します
- 軍人
- 旧ムスリム連盟系政治家
- 軍政支持に偏向したアワミ連盟
- 左派政党の一部指導者
が集まった官製政党です。
バングラデシュ国内総選挙の変遷
バングラデシュ民主化後の国内総選挙の変遷を見ていきます。
1991年
民主化後初の総選挙で、カレダ・ジア率いるバングラデシュ民族主義党(BNP)が勝利し、カレダ・ジアが首相に就任。
1996年
総選挙ではアワミ連盟(AL)が勝利、党首シェイク・ハシナが首相に就任。
2001年
総選挙で
- 経済建設を重視
- 穏健な改革を訴え
を掲げたバングラデシュ民族主義党(BNP)が再び政権を取ります。
アワミ連盟(AL)とバングラデシュ民族主義党(BNP)の両政党による二大政党化が進んでおり、両党の得票率の合計は
- 1991年・・・60.89 %
- 2001年・・・81.10 %
にまで増加しました。
2008年
アワミ連盟(AL)が再び政権を奪取します。
選出対象の299>議席中、
- シェイフ・ハシナ元首相の率いるアワミ連盟(AL)・・・230議席(得票率48.06%)を獲得
- 前与党のバングラデシュ民族主義党(BNP)を中心とする4党連合は32議席に激減
投票率は、87%という高さでした。
2014年
与党アワミ連盟(AL)の
- 憲法を改正
- 選挙管理内閣制度を廃止
に最大野党のバングラデシュ民族主義党(BNP)など野党陣営が反発し総選挙をボイコットしましたが、総選挙は実施され、与党アワミ連盟(AL)の圧勝に終わりました。
2018年
連続3期目を狙うアワミ連盟(AL)に対し、前回ボイコットした野党はバングラデシュ民族主義党(BNP)を中心に連合を組みました。
2018年の総選挙では
- 経済発展を強調する与党
- 強権姿勢を批判し政権交代を目指す野党
が注目されていましたが、今回の総選挙の前に野党バングラデシュ民族主義党(BNP)指導者の
- カレダ・ジア元首相
- カレダ・ジア元首相の息子
は有罪判決を受け選挙は不参加。
投票日前から与党アワミ連盟(AL)の優位が予想されており、投票当日、政府は治安部隊60万人超を動員し厳戒態勢を敷きましたが、各地で支持者の衝突があり、地元メディアは少なくとも17人が死亡したと報道しています。
アワミ連盟(AL)の圧勝に終わりました。
バングラデシュ国民の信仰宗教と生活
バングラデシュ統計局によると、バングラデシュ国民の信仰宗教は
- イスラム教・・・88.4%
- その他(ヒンズー教徒,仏教徒,キリスト教徒)・・・11.6%
となっています。
イスラム教
イスラム教の中でも種々な宗派があり、細かい部分でルールが違いますが共通するルールとして
- 女性の服装・・・基本的にムスリムの女性は肌を見せてはいけません。
- 豚肉厳禁・・・豚はイスラム教は不浄な生物として扱われているため、豚肉が食卓に上がることはありません。戒律の特に厳しい国では、豚肉を触った手で調理することすらも敬遠されます。
- 飲酒禁止・・・イスラム教国では基本的に飲酒禁止です。
- ラマダン(断食)・・・断食と言えども24時間絶食をするのではなく、日没から日の出は唯一食事を摂れる時間として設けられています。
不浄・・・清浄でないこと。
イスラム教では聖典コーランに豚が不浄な生物であると記述があるだけで、何故、豚が不浄な生物理由は諸説あり真意は分かっていません。
バングラデシュの給料事情
- バングラデシュの首都ダッカの平均月給・・・55,000BDT(約77,000円)
- 4年制の大学の新卒者の月給・・・15,000〜20,000BDT(約21,000〜28,000円)
- バングラデシュの総理大臣の月給・・・115,000BDT(約161,000円)
因みに、日本の総理大臣の月給は241万9000円です
バングラデシュのテレビ事情
バングラデシュでテレビ・コンテンツを視聴する方法として、大きく分けて
- 地上波放送
- 衛星放送
- ケーブルテレビ
これらいずれかの方法で電波・通信を受信してテレビを視聴する必要があります。
バングラデシュでは、民間事業者による地上波放送はありません。
地上波放送で視聴出来るのは、
- 国営の総合放送バングラデシュ・テレビジョン(Bangladesh Television:BTV)
- 議会放送 (Sangshad Television)
の2系統のみです。
バングラデシュで
- スポーツ番組
- バラエティ番組
- 映画
- ドラマ 等々
民間業者によるテレビ・コンテンツを視聴する為には、
- 衛星放送
- ケーブルテレビ
の事業会社と加入契約する必要があります。
衛星放送
DTH(Direct-To-Home)事業のライセンスを持っているのは、国内で
- Beximco(Real VU)
- Buyer Media Limited
の2社しかありません。
バングラデシュは以前まで、自国で打ち上げた衛星が無かったため、外国の衛星にコストを払って衛星放送事業を行ってきました。
2018年5月11日、バングラデシュ第一号のBangabandhu Satellite-1(バンガバンドゥ衛星1)がスペース・エックスのファルコン9にロードされケネディ宇宙センターから発射されました。
衛星放送を視聴するためには
- Dish-antenna(ディシュ・アンテナ)
- Set-Top Box(STB:セット・トップ・ボックス)
が必要になります。
(写真左)ディシュ・アンテナ,(写真右)セット・トップ・ボックス
出典:Bengal Communications Ltd
Beximco(Real VU)の
- 初期設定費用
- 月額利用料
は下記の通りです。
DTHサービスプロバイダ | Beximco(Real VU) |
---|---|
初期設定費用 | 5200 TK |
月額利用料 | 300 TK |
ケーブルテレビ会社
バングラデシュにはケーブルテレビ会社は数多く有ります。
有名なケーブルテレビ会社であるBengal Digital TV(ベンガル・デジタル・TV)の
- 初期設定費用
- 月額利用料
は下記の通りです。
ケーブルテレビ会社 | Bengal Digital TV |
---|---|
初期設定費用 | 2,100(SD) ~ 3,000(HD) TK |
月額利用料 | 300 ~ 600 TK |
ベンガル・デジタル・TVの視聴可能チャンネル・パッケージの詳細を確認したい方

バングラデシュのビザ関係
日本人がバングラデシュへ入国するためにはビザが必要です。
バングラデシュへの渡航目的によって取得するビザは異なります。
- 業務ビザ・・・渡航目的が会議出席を含む等々の商用業務
- 就労ビザ・・・現地の企業に就職し雇用
- 観光ビザ・・・観光目的の渡航
- アライバルビザ(到着ビザ)・・・バングラデシュの空港で取得可能。最大で30日間の滞在可能
オーバーステイ
バングラデシュへ渡航後、予定外の事情により、取得ビザの滞在可能期間を越える滞在(オーバーステイ)を考慮せざるを得ない方がいるかもしれません。
バングラデシュでのオーバーステイは、空港内の入国管理局(イミグレ)に制止されますが、罰金を払う事で解決出来る可能性が高いです。
罰金
オーバーステイによる罰金は、
- 超過日数が15日までの場合・・・1日につき200タカ
- 16日以上・・・1日につき500タカ
の支払いが必要です。
但し最大負担限度額はオーバーステイの超過日数が90日の3万タカまでとなっています。
90日を超えるオーバーステイは警察による拘束と裁判になることもあり、罰金額が別途決定されます。
バングラデシュでビザ延長
短期ビザでのオーバーステイは、空港内のイミグレで罰金を支払えば済む可能性は高いですが、イミグレの職員の裁量によっては罰金だけでは済まない可能性があります。
バングラデシュ国内の入国管理局(イミグレ)・パスポート・オフィスでオーバーステイ分の罰金を支払いビザ延長の許可を貰えば空港内のイミグレで制止されることはありません。
入国管理局(イミグレ)・パスポート・オフィス
バングラデシュの入国管理局(イミグレ)・パスポート・オフィスは、国会議事堂の北付近にあります。
延長ビザは1日で取得出来ません。
- 延長ビザを申請する日
- 延長ビザを受取る日
最低2回、イミグレ・パスポート・オフィスに通う必要があります。
イミグレ・パスポート・オフィスでのビザ延長申請の営業時間は10時から13時までで
- ビザ延長申請費用は無料
- オーバーステイ前の申請者・・・罰金払う必要なし
- オーバーステイ後の申請者・・・罰金払う必要あり
- 証明写真(標準サイズ)
- ボールペン
- パスポート・パスポートの証明写真があるページのコピー
- バングラデシュ入国時のビザのコピー
- バングラデシュ入国時の入国スタンプのコピー
- 申請書・申請書のコピー
を携えてイミグレ・パスポート・オフィスの5階に行く必要があります。
申請用紙記入・コピー
5階のオフィスの入口の扉を通り、前方に見える中央扉から向かって右側のカウンターで前述の申請書を受け取り必要事項を記入します。
申請書のコピーも必要です。
オフィス内にはコピー出来る場所が無く、イミグレ・パスポート・オフィスの建物を出て南側の通りに向かうと、至る所にコピー屋さんがいます。(10 〜 20タカでコピー出来ます)
整理券発行
5階のオフィス入口の扉を通過後、左手側に発券機があります。
「Form Submission」を選択し整理券を受け取ります。
オフィス内の待合室にある中央扉の左側にあるカウンターの電光掲示板に自分の整理券番号が表示されるまで待ちます。
ビザ引換券の受取
書類提出後、オフィス内の待合室にある中央扉を前方に見て、一番右側にあるカウンターに案内されるので、そこで延長ビザの受取日が記された引換券を発給して貰います。
延長ビザの受取
受取った引換券に記載されている受取日に再度、イミグレ・パスポート・オフィスに出向きます。
イミグレ・パスポート・オフィスに到着後、入口の扉を通り左手側の発券機で「Visa Delivery」を選択し整理券を受取ります。
- 「Visa Delivery」の整理券
- 受け取った引換券
- パスポート
を職員に提出します。
この延長ビザの発行には時間が掛かります。
以上、バングラデシュの
- 独立するまでの歴史
- 国内政治
- 宗教と国民の生活
- ビザ関係
になります。
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