NISAとiDeCoの併用?NISAとiDeCoの違い
将来の資産形成を目的に、日本政府が個人投資家向けに設計した投資優遇制度として
- NISA・・・2014年1月より開始
- iDeCo・・・2017年1月より開始
が利用出来るようになりました。
NISAは、イギリスのISA(Individual Savings Account = 個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(Nippon Individual Savings Account)と呼ばれ、通常の株式や投資信託等々の売買益や配当金などが非課税になる制度のことです。
iDeCo(イデコ)は、
- individual Defined Contribution(個人型確定拠出年金)の略
- 自分で将来のために月々の積立金額となる掛金を設定し積み立てる個人年金
になります。
NISA | iDeCo | |
---|---|---|
制度 | 少額投資非課税制度 | 個人型確定拠出年金 |
運用期間 | 5年(最長10年) | 加入から60歳まで(10年間延長可能) |
年間投資上限額 | 年間120万円 | ・自営業者(第1号被保険者)・・・年間81万6000円 ・会社員や公務員(第2号被保険者)・・・年間14万4000円 ~ 27万6000円 ・専業主婦等々(第3号被保険者)・・・年間27万6000円 |
運用商品 | 株式・投資信託・REIT・ETF 等々 | 定期預金・保険・投資信託 |
換金 | いつでも換金可能 | 60歳まで原則換金不可 |
節税効果 | 売買益・配当金・分配金などの投資で得た利益にかかる税金20.315%が非課税 | ・掛金が、所得税、住民税の全額所得控除に可能 ・運用で得た利益が非課税 ・年金受取り時、括受取は退職所得控除、分割受取は公的年金等の控除の対象 |
政府・メデイア等々の宣伝・広告もあり、NISA・iDeCo(イデコ)の加入者・口座数も年々増加しています。
口座数 | 一般NISA | つみたてNISA | NISA(一般・つみたて)・ジュニア NISA |
---|---|---|---|
2017年3月時点 | 10,771,391 | - | 10,771,391 |
2018年3月時点 | 11,170,196 | 507,462 | 11,677,658 |
2019年3月時点 | 11,550,823 | 1,274,188 | 12,825,011 |
2020年3月時点 | 11,859,048 | 2,196,808 | 14,055,856 |
2020年6月時点 | 12,007,249 | 2,443,717 | 14,450,966 |
iDeCoの加入者数 | 第1号加入者 | 第2号加入者 | 第3号加入者 | 計 |
---|---|---|---|---|
2017年3月時点 | 85,075人 | 339,649人 | 6,205人 | 430,929人 |
2018年3月時点 | 120,144人 | 710,381人 | 23,198人 | 853,723人 |
2019年3月時点 | 148,326人 | 1,024,319人 | 37,392人 | 1,210,037人 |
2020年3月時点 | 177,857人 | 1,331,649人 | 53,308人 | 1,562,814人 |
2020年8月時点 | 189,862人 | 1,440,584人 | 60,308人 | 1,690,754人 |
第1号加入者・・・自営業者や農業者とその家族、学生、無職の方等々 第2号加入者・・・厚生年金適用事業所の会社員や公務員等々 第3号加入者・・・第2号被保険者に扶養されている配偶者 |
NISAやiDeCo(イデコ)を利用する事で
- 節税効果
- 投資効率が格段にアップ
が見込めます。
節税効果が大きい制度のためどちらか一つを始めるのか、両方の制度を利用すべきか迷う方も多いと思います。
そこで、この記事では
- NISA
- iDeCo(イデコ)
の二つの制度の違いや特徴、メリット・デメリットなどについて解説した後に、筆者独自の視点でどのようにNISA・iDeCo(イデコ)を運用すべきか説明していきます。
NISAとiDeCo
- NISA
- iDeCo(イデコ)
は投資優遇制度という点では同じですが、創設趣旨が
- NISA・・・日本政府が国民一人一人の個人金融資産を「貯蓄から投資へ」を促進しようとする政策
- iDeCo(イデコ)・・・老後資金をつくる制度
という全く性質の異なるものとなっています。
NISA | iDeCo | |
---|---|---|
制度 | 少額投資非課税制度 | 個人型確定拠出年金 |
運用期間 | 5年(最長10年) | 加入から60歳まで(10年間延長可能) |
年間投資上限額 | 年間120万円 | ・自営業者(第1号被保険者)・・・年間81万6000円 ・会社員や公務員(第2号被保険者)・・・年間14万4000円 ~ 27万6000円 ・専業主婦等々(第3号被保険者)・・・年間27万6000円 |
運用商品 | 株式・投資信託・REIT・ETF 等々 | 定期預金・保険・投資信託 |
換金 | いつでも換金可能 | 60歳まで原則換金不可 |
節税効果 | 売買益・配当金・分配金などの投資で得た利益にかかる税金20.315%が非課税 | ・掛金が、所得税、住民税の全額所得控除に可能 ・運用で得た利益が非課税 ・年金受取り時、括受取は退職所得控除、分割受取は公的年金等の控除の対象 |
NISAが創設された背景は先述したように、個人金融資産を「貯蓄から投資へ」を促進する事で、経済の循環を好転させる事です。
2020年3月に公表された日本銀行「資金循環統計2019年第4四半期(10月〜12月)」によると、2019年12月末の個人金融資産残高は1,903兆2,671億円あり、個人金融資産の約53%が現金・預金となっています。
一方、iDeCo(イデコ)は、日本の公的年金システム崩壊の前に、個人の引退後の収入財源を公的年金だけに頼るのではなく、現役間に自分で投資・貯蓄の運用によって形成した私的年金を老後資金として欲しいからです。
以下、
- NISA
- iDeCo(イデコ)
の順に、それぞれの特徴、メリット・デメリット等々について解説していきます。
NISA
NISAは、日本政府が個人投資家向けに設計した投資優遇制度と言っても、皆さんがご存知のような
- 投資信託
- 株式 等々
の投資と何も変わりません。
つまり、投資した投資信託や株式の価額が値下がりすれば損が出ますし、値上がりすれば益が出ます。
NISAと普通の投資信託・株式投資の決定的な違いは、普通の投資信託・株式では
- 売買益
- 配当金
- 分配金 等々
の投資で得た利益には、20.315%の税金が課せられますが、NISAではこれらの利益は非課税扱いになります。
また、NISAには
- 一般NISA
- 積立NISA
があり、それぞれ
- 運用期間
- 年間投資上限額
- 運用商品
が違います。
一般NISA | 積立NISA | |
---|---|---|
制度 | 少額投資非課税制度 | |
運用期間 | 5年(最長10年) | 20年間 |
投資上限額 | 年間120万円 (最大600万円) | 年間40万円 (最大800万円) |
運用商品 | 株式・投資信託・REIT・ETF 等々 | 金融庁指定の基準をクリアした限定された投資信託とETF |
換金 | いつでも換金可能 | |
節税効果 | 売買益・配当金・分配金などの投資で得た利益にかかる税金20.315%が非課税 |
積立NISAの年間投資上限額は40万円と一般NISAの120万円より少ないですが、運用期間が20年間と長い為、総投資上限額は800万円と一般NISAの600万円より多く投資出来ます。
NISAの一番のポイントは「運用商品選び」です。
NISAを利用して得た利益に対して、非課税という恩恵が得られることは分かりましたが、投資した商品が購入した商品より値下がれば、売却益が出ない為、非課税の恩恵が全く受けれません。
しかし、この「運用商品選び」は初心者にとって頭を悩ます問題です。
- 一般NISA
- 積立NISA
では、それぞれ運用出来る商品が違い、投資初心者にとって「一般NISA」から運用商品を選ぶのは無理難題です。
一般NISAの対象商品 | 一般NISAの非対象商品 |
---|---|
・上場株式(国内株、外国株) ・店頭管理銘柄株式(出資、投資口を含む) ・国内REIT(J-REAT) ・海外REIT ・上場株式投資信託の受益権(ETF) ・上場投資証券(ETN) ・上場未公開株式等投資法人の投資口(ベンチャーファンド) ・上場外国投資法人の投資口(カントリーファンド) ・上場新株予約権 ・上場新株予約権付社債(ワラント債) ・上場転換特定社債 ・上場新優先出資引受権付特定社債 ・上場優先出資証券 | ・非上場株式 ・上場株式の信用取引 ・預貯金 ・債券(国債・地方債・社債など) ・公社債投資信託 ・MMF、MRF ・eワラント ・上場株価指数先物 ・外国為替証拠金取引(FX) ・貴金属(金・銀・白金・プラチナ・パラジウムなど) ・仮想通貨 |
一方、「積立NISA」で運用可能な金融商品は、金融庁指定の基準をクリアした限定された投資信託とETFで限定されており、投資初心者にとっては運用商品を選びやすくなっています。
iDeCo
iDeCoは年金制度の一つで、会社員や公務員の方なら
- 確定拠出年金(DC(Defined Contribution))
- 確定給付年金(DB(Defined Benefit))
という年金制度を耳にした事があるかもしれません。
この中の確定拠出年金(DC(Defined Contribution))は、更に
- 企業型
- 個人型
に分かれており、確定拠出年金(DC(Defined Contribution))の個人型(individual)が、iDeCo(individual Defined Contribution(個人型確定拠出年金))になります。
iDeCo | |
---|---|
制度 | 個人型確定拠出年金 |
運用期間 | 加入から60歳まで(10年間延長可能) |
年間投資上限額 | ・自営業者(第1号被保険者)・・・年間81万6000円 ・会社員や公務員(第2号被保険者)・・・年間14万4000円 ~ 27万6000円 ・専業主婦等々(第3号被保険者)・・・年間27万6000円 |
運用商品 | 定期預金・保険・投資信託 |
換金 | 60歳まで原則換金不可 |
節税効果 | ・掛金が、所得税、住民税の全額所得控除に可能 ・運用で得た利益が非課税 ・年金受取り時、括受取は退職所得控除、分割受取は公的年金等の控除の対象 |
iDeCoの特徴を
- 年間掛金額上限
- 運用商品・換金
- 節税効果
に分けて説明していきます。
iDeCo・年間掛金額上限
iDeCo(イデコ)の掛金は、月々5,000円以上1,000円単位で自分の公的年金の加入状況によって上限金額が決まります。
iDeCo(イデコ)の年間掛金額上限は
- 自営業者(第1号被保険者)・・・年間81万6,000円
- 会社員や公務員(第2号被保険者)・・・14万4000円~27万6000円
- 専業主婦 等々(第3号被保険者)・・・27万6000円
になります。
iDeCo・運用商品・換金
iDeCo(イデコ)の非課税対象である運用可能な商品は
- 元本確保型商品(定期預金、保険商品)
- 運営管理機関が選定する投資信託
になります。
iDeCo(イデコ)の最大のデメリットは、一度、掛金を拠出すると、原則60歳以降の受給年齢に到達するまで資金の引き出しは出来ない点です。
NISAは、いつでも売却して証券会社口座なから出金可能ですが、iDeCo(イデコ)は掛金の拠出を停止したり再開したりすることは可能ですが、資金の引き出しは特殊な事情以外は認められていません。
iDeCo・節税効果
iDeCo(イデコ)の最大のメリットは、節税効果です。
iDeCo(イデコ)のには三つの節税効果があり、
- 掛金が所得税と住民税の全額所得控除の対象
- 通常金融商品にかかる運用益に対する20.315%の税金が非課税
- 年金受取時の「退職所得控除」「公的年金等控除」の対象
になることです。運用した資産は
- 一時金
- 年金
- 一時金と年金の両方
の三つのいずれかの形式で受け取ることになりますが、
- 一時金として受け取る場合・・・退職所得控除
- 年金として受け取る場合・・・公的年金等控除
が受けられます。
NISA・iDeCo(イデコ)の運用
NISA・iDeCo(イデコ)は、
- NISA・・・日本政府が国民一人一人の個人金融資産を「貯蓄から投資へ」を促進しようとする政策
- iDeCo(イデコ)・・・老後資金をつくる制度
という全く性質の異なる投資優遇制度です。
銀行貯蓄では、銀行の預金金利は1%未満で雀の涙程度で気休めにもなりません。
日本の物価上昇率が低いので、1%未満の銀行預金金利でも生活に支障はきたしませんが、物価上昇率が日本銀行のターゲットとなる2%になれば、銀行預金金利だけでは賄えきれません。
しかし、いざ投資を始めようとしても、株式等とうの「ハイリスク・ハイリターン」のイメージがある為、初めの一歩が進みません。
そこで、
- 少額投資
- 維持手数料が低い
- ローリスク・ローリターン
- 金融・経済の知識が身につく
の点を考慮すると、「積立NISA」が断然オススメです。
一般NISAは、
- 投資可能金融商品が多岐に亘る
- 投資上限額が600万円
ですが、積立NISAは
- 投資可能金融商品が金融庁指定の基準をクリアした限定されたローリスク・ローリターンの投資信託・ETF
- 投資上限額が800万円
となっており、投資の敷居がかなり低くなっています。
また、iDeCo(イデコ)に関してですが、筆者としてはあまりオススメ出来るものではありません。
それは、なぜかと言うとiDeCo(イデコ)の特徴が
- 投資可能金融商品が定期預金・保険・投資信託と限定
- 60歳以降の受給年齢に到達するまで資金の引き出しは出来ない
- 唯一のメリットが節税効果
という点だからです。
確かに、節税によって支払う税金の額を減らせますが、節税する方法は色々あり、iDeCo(イデコ)を利用するだけではありません。
自営業者や経営者の方なら、必要経費を捻出する事で節税効果は得られますし、会社員や公務員は
- ふるさと納税(寄付金控除)
- 生命保険料支払(生命保険料控除)
- 地震保険料支払(地震保険料控除) 等々
を利用する事で節税効果は得られます。
勿論、会社員や公務員の方で、上記の節税方法以外で、節税効果をもたらしたい方にとって、iDeCo(イデコ)は有効です。
一般NISA | 積立NISA | iDeCo | |
---|---|---|---|
制度 | 少額投資非課税制度 | 個人型確定拠出年金 | |
運用期間 | 5年(最長10年) | 20年間 | 加入から60歳まで(10年間延長可能) |
年間投資上限額 | 年間120万円 (最大600万円) | 年間40万円 (最大800万円) | ・自営業者(第1号被保険者)・・・年間81万6000円 ・会社員や公務員(第2号被保険者)・・・年間14万4000円 ~ 27万6000円 ・専業主婦等々(第3号被保険者)・・・年間27万6000円 |
運用商品 | 株式・投資信託・REIT・ETF 等々 | 金融庁指定の基準をクリアした限定された投資信託とETF | 定期預金・保険・投資信託 |
換金 | いつでも換金可能 | 60歳まで原則換金不可 | |
節税効果 | 売買益・配当金・分配金などの投資で得た利益にかかる税金20.315%が非課税 | ・掛金が、所得税、住民税の全額所得控除に可能 ・運用で得た利益が非課税 ・年金受取り時、括受取は退職所得控除、分割受取は公的年金等の控除の対象 |
筆者は、会社経営を行い、個人的に投資歴10年以上ありますが、iDeCo(イデコ)は利用せず、楽天証券で「積立NISA」を毎月コツコツと行なっています。
以上、
- NISA
- iDeCo(イデコ)
の二つの制度の違いや特徴、メリット・デメリット等々・筆者独自の視点でのNISA・iDeCo(イデコ)の運用についての解説になります。
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